「Fresh Hop Fest.2018 ひろげよう!ホップの輪(以下、FHF2018)」の開催まで1週間を切った8月27日(月)。参加するブルワリーや飲食店のみなさんと一緒に岩手県遠野市へホップ収穫体験ツアーに行ってきました。
JR新花巻駅に10時に集合。ここからバスで1時間ほど揺られながら遠野市にあるホップ圃場へ移動。車内では、資料をじっくりと読んだり、体力を温存するため睡眠をとったりと、みなさん各々の時間を過ごしていらっしゃいました。
遠野市は県南東部の内陸に位置する人口約27,000人(2018年4月現在)の都市。平均気温は9.5℃で、8月の平均気温も22.7℃とホップを栽培するに適した土地です。
遠野市のホップ栽培は、1963年(昭和38年)からとその歴史は古く、日本におけるホップ名産地です。しかし近年は後継者不足もあり、生産量は最盛期の4分の1まで減少。現在、国産ホップの生産減少を打開するために、行政や民間企業、生産者が連携した「Brewing Tono」プロジェクトを立ち上げ、新たな取り組みを行っています。
圃場につくと「BEER EXPERIENCE株式会社(以下、BE社)」の浅井さんがお出迎え。前日、前々日には「遠野ホップ収穫祭2018」が開催され、大盛況であったことを話してくれました。
続いて、BE社の社長である吉田さんからホップの生育について教えてもらいました。ホップについては、芽が出てからのことについては知っている人も多いようでしたが、株の手入れなど、それ以前の状況がいかに大切で大変なのかという話をみなさん興味深く聞いていらっしゃいました。
収穫作業の準備ができるまでは、各自ホップを見学しました。圃場にはIBUKIのほかにMURAKAMI SEVENや、まもなく情報が公開される新品種があり、形や香りの違いを見て回りました。
遠野のホップ収穫はトラクターに取り付けた椅子に座り、上部に巻き付いた蔓を鎌で刈り取って蔓ごと荷台に落とします。次から次へ切っていくのであっという間に荷台はホップでいっぱいになります。その光景に圧倒されてしまいました。
収穫されたホップはすぐに近くの収穫センターへ運び込まれ、乾燥ホップへ加工していきます。
収穫センターへ行く前には、「遠野麦酒ZUMONAビール(以下、ZUMONA)」にも立ち寄り、醸造責任者である坪井さんからブルワリーの説明をしてもらいました。こちらは、1999年に醸造を開始したクラフトビールとして老舗的存在。近年は、遠野産ホップを使ったビールの開発のほかに、遠野を「ホップの里からビールの里」にするために力を合わせているブルワリー。その一環として、「ZUMONA」内には「BE社」の事務所もあり、情報を共有しながら過ごしています。
「FHF2018」でも遠野産ホップを使った「ZUMONA」のビールが登場予定なので、どんなビールが飲めるか今から楽しみです。
「ZUMONA」を後にした私たちは、市内で1番大きい収穫センターを見学へ。
最初の工程は、摘花機にかけて毬花を茎と葉から分けていきます。分けられた毬花はベルトコンベアで工場の2階部分へ。
ここでは機械で取りきれなかった蔓を手作業で毬花から外します。こうした地道な作業があることは、来なければ知ることはなかったと思います。これからはビールを飲むたびにみなさんに感謝します。
手作業での刈り取り作業の後はいよいよ乾燥の工程に入ります。ホップは収穫後、すぐに劣化が始まるので、急いで乾燥させなければなりません。乾燥は60℃の温度で8時間かけてじっくり行います。ちなみに60℃の温度というのは世界共通なのだとか。これ以上でもこれ以下でもホップがもつ能力を最大限に引きだすことができないそうです。
8時間乾燥するとホップに含まれる水分量は、6.5~7%に。最終的に冷気を吹きかけて9%の状態にして出荷。収穫の最盛期は24時間体制で工場を稼働し、町を挙げて作業しています。こうしたところが「ホップの里」といわれる所以ですね。
収穫センターの工程を一通り見学して工場の外に出るとあるラインが目に留まりした。こちらは冷凍ホップを出荷するときに使う設備で、ここから冷凍車で工場へ運ばれます。この冷凍ホップは、FHF2018に参加するブルワリーでも使われます。
生産者の皆さんが日々、頑張ってくださっているところを実際に見て、感謝の気持ちでいっぱいになりました。
収穫センターの後は、今年5月から販売を開始した「遠野醸造」へ。こちらは、醸造家・生産者・地域住民が一体となってオープンなビールづくりをすることで、新しいビール文化を育てていくことを目指しているブルワリーです。
一通りの説明を受けて、昼食とブルワリー見学をしました。
お待ちかねの昼食は、「つまみ研究会」のみなさんが、この日のためだけに「遠野おつまみ弁当」を準備してくださいました。「つまみ研究会」は、「遠野を『ビールの里』にするならビールに合うおつまみも必要なのではないか?」と地元の飲食店をはじめとする有志の方々が集まり、研究を重ねていらっしゃいます。
お弁当は、遠野ホップ豚のチャーシュー、ヤマメの甘露煮、遠野産ひとめぼれのご飯など遠野の食材をふんだんに使った豪華な内容。「遠野醸造」スタッフのお話を聞くのを忘れてしまうくらい美味しかったです。
ブルワリー見学では、太田睦ブリュワーから設備の特徴やビールづくりの説明をしていただきました。工場内には、前日まで開催されていた「遠野ホップ収穫祭2018」で消費された大量の空き樽が。そのためビールを詰めた樽をしまっている冷蔵庫はがらんとしていました。
ツアーの最後は、お楽しみの試飲タイム。ペールエールとESB(Extra Strong Bitter)の2種類を試飲させてもらいました。
帰りは現地解散なので、遠野駅発15時09分の電車に間に合うように終了。解散後には、遠野名物ジンギスカンに舌鼓をうった方、そのまま遠野醸造で飲んでいた方もいらっしゃいました。
今回のツアーを通じて、ホップ農家の方々をはじめ、醸造家、地元の方がどんな取り組みをされているのかを少しでも理解していただけたのではないでしょうか。
ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。